インタビューをする時のポイント【実際の事例から】

下村さん*事務局より
今年度の「おせっぺとみおか」聞き書き研修では、昨年度に引き続き、下村先生を講師に迎え、インタビューの手法など、沢山のアドバイスをいただきました。下村先生より、その一部「インタビューをする時のポイント【実際の事例から】」をご寄稿いただきました。インタビューをする時、人と対話をおこなうときのヒントが沢山です。是非ご覧ください。


インタビューをする時のポイント【実際の事例から】

元TBS報道キャスター 下 村  健 一

 

長年インタビューの仕事をしてきた立場から、時々『おせっぺ』合宿にアドバイザー参加し、皆の聞き書きを傍聴させていただいています。その都度、助言は行なっていますが、例として、第1期の夏合宿の時のメモを何点か転記します。

●データよりも《思い》、知識よりも《体験》を引き出そう。
地元の山の思い出話が出たときに、「標高は?」「わかりません」というやり取りがあった。標高なんて、後で調べればすぐにわかる。そのような《自分で調べればわかる事》は、聞き書きの目的ではない。こうしたデータや知識からは、富岡の外面しかわからない。富岡の内面を伝えるのは、思いや体験だ。それは、同じ土台を共有する“町の子”にしか聞き出せない。

●考えをまとめる必要のない、《ただ思い出せばいいだけの質問》を。
外から移り住んだ語り手さんに対し、「富岡に溶け込めたきっかけは?」という良い質問が出た。でも、こういう質問って、スパッと答えるのはなかなか難しい。いきなり聞かれても、人は普段、自分の人生を整理しながら振り返っているわけではないから。そこで、語り手さんが答に詰まったら、もっと具体的な問いに切り替えよう。「溶け込めたなァと、ふと思った瞬間って、誰から何て言われた時?」とか、「今、富岡で一番の親友は誰? その人と打ち解けた瞬間って、どんな場面?」とか。そんな光景の再現の中から、当時のコミュニティの雰囲気や暖かさが、私たちの目にも浮かんで来る。

●シーンをリアルに思い浮かべれば、興味津々に次の質問は湧いて来る。
「中学校の時は1学級が約50人」という話が出た。聞いた話は、頭の中で《言葉から映像に置き換え》よう。教室に50人の生徒がいるシーンを想像したら、自然に「そんなに満員で、休み時間はどう過ごしてたの?」という疑問が浮かぶ。生徒が増えていく場面を想像したら、「しょっちゅう転入生の挨拶があったわけ?」「転入組と地元組の対立は?」とか、色々な事を尋ねたくなる。そこから、原発建設の頃の富岡の活気や小混乱が、子供の世界を通じて描き出せるかもしれない。

●《思いの強い言葉》は、スルーせず掘り下げよう。
大学進学の話で、語り手さんから「人生最大の挫折」という言葉が出た。これは、気になるよね。そこで「え、そこからどうやって立ち直ったの?」と問えば、今大きな苦悩の中にいる町民皆が共有できるような、向き合い方・乗り越え方のヒントが見えるかもしれない。あるいは、「最大の挫折は3・11の時じゃないの?」と問えば、《震災体験は、挫折とは種類が違う》という思いが言葉になって浮き上がるかもしれない。そんなやり取りによって、語る意味も無さそうに思えたプライベートな「一個人の体験」が、書き留められる価値のある「一町民の体験」に変わる。

―――ここに列記したことは、《テクニック》ではない。ただ語り手と真剣に向き合って対話し、《反応せよ》。それだけでいい。
 要は、聞き書きの向こうに、富岡町という“人の束”の営みを見ることだ。それは、町史年表とも統計集とも違う、とみおかの子にしかできない事だから。

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